あるところにあんどうやすしという男がおったそうな。
ある日のこと、やすしは村の端で遊んでいて足元に赤い石が落ちていることに気がついた。
なんのこともない石に見えたが、やすしはそれが気になって仕方がない。
とりあえず拾って懐にしまい、ときどき取り出してはつついたり、投げたり、かじったりしておった。
どうやら周りにも同じような石で遊ぶ村人がちらほらいるようじゃったが、やすしは気にせずひとりで遊んでおった。
それからしばらくしたある日のこと、出かせぎから村に帰ってきた男が言うたそうな。
「山向こうの村ではこの赤い石で線路やらゆうもんを作っていい感じにやっておった。おらが村にもみなで線路を作るべぇ」
やすしもそれはいい話じゃと思うて、村の寄り合いであぁでもないこうでもないと赤い石について話をするようになった。
そして気がつくと村人の多くが赤い石で遊ぶようになっておった。
やすしもうれしくての、赤い石に得体の知れない飾りをつけては村人に見せ、ゲラゲラ笑って遊んでおったとな。
そんなある日
「川向うには青い石もあると聞く。赤い石もよいがたまには他の石も触ってみたいもんじゃのう」
やすしはふとそんなことを考え、赤い石を置いて橋を渡り、川向うに行ってしまったそうな。
「しまった!この青い石は馬の糞じゃ!狸に化かされた!臭い!臭いぞ!」
そうやすしが気づいたときにはもう遅い。
川を渡る橋は消え失せ、川向うの村も霧に隠れてすっかり見えなくなってしまった。
やすしは元の村に帰ろうと川沿いを走り続けたが、本当に帰れたかどうかを知っておるものはどこにもおらんそうな・・・。
とっぺんぱらりのぷう。
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